本書に登場するのは、今日のリスク管理モデルの理論的根拠を示し、ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツ、「経済学の最後のジェネラリスト」ポール・サミュエルソン、ベストセラー『Stocks for the long Run』(邦題『シーゲル博士の株式長期投資のすすめ』)で長期投資の優位性を主張したジェレミー・シーゲル、アクティブ運用に挑戦状をたたきつけ、インデックスファンドの時代を築いたバンガード・グループの創始者ジョン・ボーグル、バリュー株の成長株に対する優位性を説いたジョセフ・ラコニショック、行動ファイナンスの分野で多大な貢献をしたリチャード・セイラー、「資産配分の重要性」を説いたゲイリー・ブリンソン、著書『Against the Gods』(邦題『リスク―神々への反逆』)が話題となったピーター・バーンスタイン、ポートフォリオのリスク測定およびコントロールを簡素化し、ノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・シャープの9人。
いずれの理論も今日の投資理論の根幹をなすものであり、本書では彼ら自身の言葉を引用することによってこれらの理論を明快に解説している。決して特定の投資スタイルを押しつけるものではなく、あくまで客観的な視点から、各人の理論とその根拠をまとめている。まだ大学院の学生であったマーコウィッツの劇的な発見や、若き日のジョン・ボーグルの奮闘など、エピソードも豊富で読みごたえがある。これから本格的に投資理論を学ぼうとする人に、ぜひおすすめしたい1冊である。(土井英司)