本書は誰にでも入手できるデータを使い、簡単な理論的枠組みで、役立つ実践的な株式投資の手法を詳細に述べたものである。まず本書で明確にしていることは、「投資」と「投機」の違いである。その違いを意識している投資家は少ないとしながら、健全な株式投資のあり方について説明をしている。次に、株式投資を始める前に理解しなければならないこととして、「投資の人間的側面」に焦点を当てている。世の中には株式投資に向かない人が必ずいて、その典型が日々の株価変動が気になって眠れない人や、株価が下がりはじめると我慢ができなくなって株式をすぐに売ってしまい、後悔するという人。そんな人は株式投資をしてはならないと断言している。株価を前にして自分の心理的耐用度がどの程度なのかをまず知ることが重要と説いているのだ。
さらに、株式投資には近道はない、そのため株式投資の王道を歩むしかないという。その王道を20世紀の投資における達人たちの秘術を詳細に述べることによって明らかにしている。簡単な統計学を駆使しながら、株式投資につきもののリスク=ボラティリティ(変動)を利用することで、大きな投資の成果を得ることができるとしている。そして、株式投資では儲けることも大事だが、それと同様に重要なのは「損をしない」ことだという。リスクが存在する以上、損する可能性もあり、そうした現実に目をつむっていては賢い投資家にはなれないと指摘する。まさに、株式投資に関して肝に銘じなければならないことだらけである。(辻 秀雄)