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変貌する労働時間法理―“働くこと”を考える

価格: ¥3,024
カテゴリ: 単行本
ブランド: 法律文化社
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労働する者の自律を支える労働時間法理を探って ★★★★☆
 本書は、労働時間を巡る裁判例を敷衍する形で、労働時間に関する実定法とその実定法の抽象的な文言を具体的な判断基準に落とし込む判例法理の展開を解説するもの。

 本書から浮かび上がってくるのは、個々の事案の解決としては労働者の権利を擁護するような「妥当」な判決に見えつつも、その判例法理に本質的に埋め込まれている問題点であり、労働時間、要すれば「使用者の指揮命令に拘束される時間」を巡る実定法と判例法理が、いかに使用者側に有利に設定されているかということだ。
 そこでは、「総合的に業務を遂行する上で不可欠」といった理由で、個別の「使用者」の指揮命令や就業規則の設定・変更が正当化されてきた歴史が展開されている。それが、結局、一方で、死に至る程の長時間労働を生み出している。

 本書では、淡々とではあるが、労働時間を巡る判例法理の展開を解説しており、量産されているワーキングプアもののルポのような、直裁的な「怒り」は表明されていない。
 しかし、 その淡々とした筆致がかえって静かな怒りを表現しているようである。
 行政判断や司法判断を変えさせようという時には、拳を掲げるシュプレヒコールが有効な場合もあるが、本書のように、これまでの判断の積み重ねが生み出した帰結を訥々と述べることが、問題の本質の理解を深め、事態を変える原動力となる場合があるということだ。

 分担執筆であるため、個々の章の間に重複等はあるし、書き下ろし単著のように論旨がきりきりと巻き上げられていくという構成ではないものの、著者たちが同じ研究会で議論しているということもあり、本書から醸し出される論旨が混乱しているということはない。

 派遣切りなどが問題とされ、新自由主義的な言説の荒が白日の下にさらされてきている昨今、働き方・働かせ方が真剣に問い直されなければならない。この「働き方・働かせ方」という問題に労働時間という観点から光りを当てている本書の価値は高いと思われる。