ただ特に何かを学ぼうとして読んだわけではないので、マーケティングよりも実際の戦争で使われた戦術のほうが気になりました。
読み物としても十分面白いです。
本書は、競争戦略の重要性を唱え、戦略の本質を歴史上の戦争を通して考察し、そのコンセプトをマーケティングに適応することを試みている。本書を読んで改めて認識させられることは以下の二点。
第一は、戦略の良し悪しは、その戦略を誰が使うかによって決まること。つまり、マーケットリーダーにとって優れた戦略であっても、No2 や No3 にとっては良い戦略とは言えない。逆もまた真であり、全ての者に絶対的な戦略があるのではなく、マーケテットにおける自社のポジションによって、取るべき戦略は大きく異なってくる。ある企業で成功した戦略はどの企業にも適応できるかのような錯覚を与える書も見かけるが大きな間違いである。
第二は、相手の反撃を十分に予想した戦略でなければならないこと。同じ戦略を実践しても、敵の反応によって、その成果は大きく異なる。戦略的環境の下では、仕掛けた行為には必ずリアクションが生じる。しかし実際にはリアクションを度外視あるいは軽視した一方的な戦略で失敗した例は後を絶たない。不思議なことに、マーケティングで高い評価を受けている企業にも、このような失敗は見られる。
いずれも戦略立案上ごく初歩的な戦略的思考であるが、これら二点だけ取り上げても実際のマーケティング戦略に十分に反映されているとは言い難い。“超競争志向”の現代において、戦略的思考のできないマーケターは、失格どころか、「百害あって一利なし」と一笑に付されてしまう。本書は、現代のマーケターが、戦略(特に競争戦略)を学び、戦略的思考を身につける上で是非とも最初に手にしてほしい一冊である。