本作『Kiss: The Second Coming』は、バンド公認の英雄伝と言えそうな作品で、商業的性格が強かった1996年のツアーに焦点を当てている。この時のキッスは、全盛期のアルバム『Alive II』の頃に戻ったかのような過激メイク＆衣装で、70年代ヘヴィメタを代表するバンドの復活を宣言したのだった。122分間の本作は、気骨あるマニア以外にとっては1時間ばかり長すぎる。バンド初期の火吹き芸を連発するオープニングで、すでにピークを迎えてしまうのだ。その後は、お約束的なダイジェスト映像で過去の栄光を振り返り、長いバックステージ・シーンを経て、「復帰できて嬉しいぜ」的な発言を強調するといった調子。鋭い切り口はあまり見られないが、神格化されたキッスを揶揄（やゆ）したコミカルな場面がある。ジーン、ポール、ピーター、エースの巨大な風船人形が膨らんでいくところが描かれるのだ。3曲のツアー・パフォーマンス（「Detroit Rock City」と「Shout It Out Loud」のミュージック・ビデオを含む）が、全体の退屈さを多少なりとも軽減してくれる。（Rickey Wright, Amazon.com）