中立的なプロによる最新インドネシア経済入門
★★★★☆
インドネシア経済に関心がある人にはお薦めの入門書である。略歴によれば、著者はスハルト時代初期からのインドネシア経済ウォッチャーであり、まさにこの道のプロだ。そのうえ私見を避けた客観的な記述が好ましい。金融機関が顧客獲得のために出す営業トーク満載のレポートとは全く違う。正直言って門外漢の僕には判断し難いが、この分野の専門家が読んでもバランスがとれた内容と思うだろう。一時は東アジアの奇跡(ホント、そうだったんだよね!)とまで言われるほど発展したこの国がアジア通貨危機以来まさに低迷し続け、KKN(腐敗、癒着、身びいき)のくびきで苦しんでいる。著者が終章で「求められる強いリーダーシップ」と言っているが、これがキーポイントでしょう。ゴーンさんみたいな強いリーダーが国のCEOになり、優秀で、正直で、献身的なテクノクラート軍団が彼を支えて欲しい。日本のご近所さんであるこの国の発展と安定のために、日本の政府と民間は何ができるか? 尾村先生、次回作ではこの点につき提言をしていただけると嬉しいです。