私は経済について全く無知である。新聞を読んでも何が何だかわからない。しかし、そんな人間でさえ、1970年代のニクソン・ショックから80年代のJapan as No.1の時代を経て、90年代の景気後退を見て、現在の不安な状況に至ると、「おかしいなあ?」と疑問に持つ。日本人は同じようなことをしてきたのだから、こうなったのは外的条件の変化なのだと思う。本書は、そんな無知な人間にもわかるように、読みやすく明解に、この「外的条件の変化=アメリカに一番都合のいい経済システム(=グローバリズム)形成・維持・強化を目的とする方針(=ワシントン・コンセンサス)に沿って、繰り出されてくる手によって、翻弄されたアジアと日本の経済状況とその苦闘の相」というものを、示してくれる。経済的に重要な事件、機関、用語の説明や、事件や現象の因果関係を丁寧に説明しながら、第二次世界大戦後の日本の歩みを跡付けてくれる。全然わからないことを、諄々と粘り強く解き明かし整理してくれる本は、ほんとうにありがたい。
結論は、日本はアメリカの経済システムとは違う自らの進むべき道を提示すべき、ということになるので、「それが一番きついよ・・」と読者はため息をつくことになるが、これが世界の現実なのだ・・・しかし、なぜこのような、きちんとした本に、参考文献のリストや索引がないのだろう。引用文献への言及は、ちゃんと本文中にある。本書は、良心的な学問的な本である。だから、出版社は、それなりにふさわしい処遇を本書にすべきだ。