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ヒロシマをさがそう―原爆を見た建物 (文明の庫双書)

価格: ¥1,512
カテゴリ: 単行本
ブランド: 西田書店
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想像力を無限に拡げてくれる一冊 ★★★★★
時に映画でも実にゆっくりと、力強く心に迫ってくる作品がある。
本でいえば、色川武大作品などにもそんな作品が多いだろう。
今日ご紹介する一冊も、そんな一冊である。

 日本の歴史を思う時、色々とその区切りはあるが、1945年は代表的な
境目である。その前後。戦争をしているときと、敗戦した後。
思えば、私は1962年に生まれたので、原爆が広島、長崎に落ちてたった、
17年後のことだ。
今、平成のこの時、生まれる命も原爆投下後たった数十年の命である。
 戦争が終わってまだ、たった63年なんだ。

今回の書評は「ヒロシマをさがそう」という写真集である。
変形B6というちょっと新書判より大きいかな、という程度のコンパクトな書籍である。
一見写真集とは映らないが、某書には「うなる写真集」として推薦する5つの写真集の中に堂々と入っている。

3名の共著であり、内、写真家の井手 三千男さんはすでになくなっている。井手さんのおそらくは最後の作品となったのでは、と察する

 副題に「原爆を見た建物」ある。
原爆投下前、そしてその後の建物の変貌を、物言わぬ写真がより雄弁に語り始める。
一貫して訴えるのは、建物は道標だということ。一瞬にしてまさしく荒野となったあと、
家族の下へと我が足を導いたのは、原爆と言う悪魔にさえ負けなかった建物だ。
あの建物の向こうに、母がいる。父がいる、兄が、妹が、わが子が、いるはずだ。
 そう想い、念じながら傷ついたわが身を支え、人々は歩き続けたのだ。

淡々と、原爆前、直後、そして、現在の建物の白黒写真と、そして、資料を読み進めていくうち、心が、魂が建物に吸い込まれていく。私が現在広島に居を構えているからそうなのか、というと、そうではなく、誰もが心の想像力で道標を探し始める。

ああ、やっぱり、本とはかくも力のあるものなんだな。

わかっていたつもりでも、あらためてその力を
目の当たりにすると、こちらも足腰をふんばっているのに気付いた。

本書より、引用させていただく。
「純治さんは大やけどを背負い、ほとんど目の見えない中で、わずかに残された力を振り絞り、我が家を目指した。工兵橋を渡り、生まれた牛田の地に辿り着いたところで安堵したのかもしれない。浩治さんと寺の手伝いにきていた人の二人は、純治さんを担架に乗せ、傾きつつある太陽を背にして、寺に向かった。
布団に寝かせると、純治さんは苦しみつつも我が家に帰ったことを悟った。うわごとで「あと何メートル?」と問いかけるので、兄の浩治さんが「あと100メートル」と答えるとがっかりし、「5メートル、1メートル」というとほっとしていた。必死で寺を目指し続けていたのだ。
 純治さんは、8月10日に意識が無くなり、12日の昼、12歳の生涯を終えた。
  (中略)
市内6箇所で作業していた8,300人のうち、6,300名が死亡、行方不明となった。

 帰ろうとした家、それは家族だった。

 広島の地には、子どもたち、大人たちは目指した家と家族の記憶があったはずだ。」

 この本は広島について書かれている。しかしながら、その魂は長崎を始め、全国の戦争被災地へと届く。

歩かなければならない。さがさなくてはならない。
建物と言う道標を見て、記憶を読み、想像して、未来を考えたい。

ヒロシマをさがすことは、必ず未来につながるだろう。
長崎につながり、全国へつながるだろう。

 この本を残してくれた、山下和也さん、井手 三千男さん、叶 真幹さんを初め、
書籍制作に携った皆さんに感謝の思いで一杯である。

 本書がこの度、再販されたようだ。心底うれしい。
    良書が売れない国に、未来など無いから。

   
新しい被爆都市ヒロシマのガイドブック ★★★★★
広島駅に新幹線から降り立っても、そこにどんな惨状が拡がっていたのかを想像することはできない。1945年の8月6日の朝から、もう60年以上経過した街並みから、その時の傷跡を探すこともできない。
そこで被爆したのは人間だけではない。又、原爆ドームだけでもない。たくさんの建物が被爆し破壊された。そこはたくさんの人間の住むところだったから、たくさんの家があり、お店、学校があり、工場や事務所があつたのだ。
この本はそんな建物達の記録だ。