キリスト教史の冒頭を飾る一冊だが。
★★☆☆☆
キリスト教の歴史を、全11巻で語りきろうとする試み。
どれも400ページを超える分厚い文庫本。
読んでいるうちに四隅がぼろぼろになり、
その様が内容にマッチしていい感じ。
その第1巻は、ちょっと残念。
冒頭、「邦訳への序言」が載っているが
文中に、「教会の<アジョルナメント>が叫ばれて久しい」とか
「<エキュメニズム>運動という声もこれに劣らず現代世界に響き」
という表現がある。
前者は「教会の現代化」であり、
後者は「党派を超えた世界主義」というような意味だが、
どちらも、この本やシリーズにとって柱となる重要な事なのに、
一般に普及していない語をそのままカタカナ表記にして済ましている姿勢は疑問。
その態度は本文にもそのまま反映し、
学者タイプの些末な内容が連続していく。
著者が、多くの文献によく目を通していることは解るが、
それは一般読者にはあまり関係がない専門的な事柄。
むしろ聖書の成立や、最初の組織が
どんな風に出来上がっていったかに興味があるのに
それらにはほとんど触れられていない。
それらは事実を記しただけでも劇的で、
まさに「キリスト教史」には必須事項と思われるのにほとんど素通り。
訳も直訳風。この本を読み通すことは、
耐え忍ぶことであり、そうとう味気ない体験。
でも、シリーズは幸いなことに、著者が変わっていく。
第2巻「教父時代」(H・I・マヌー)は、
上記一切の難点が解消され、
「まさにこういう本が読みたかった」という充実した読書体験になる。