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瀬島龍三 日本の証言―新・平成日本のよふけスペシャル

価格: ¥54
カテゴリ: 単行本
ブランド: フジテレビ出版
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一つの完結した世界観 ★★★★★
 自分について言えば、近代史の知識に乏しい。最近の、近代史ブームの中で、様々なことを知りたい欲求に駆られ、様々な本を読んでいるが、どこか後付けの世界観で物事を見ているように感じられる(特に戦略論系の本)。本書は、後付けでない、一つの時代性を持った世界観を構築しているという意味で、おもしろさを感じる。

 瀬島氏が毀誉褒貶のある人であることは、百も承知である。「不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))」を読んでいる人も多いだろう(私も読んだ)。
 その上で、読んでみての感想は、1)分かりやすいことと、2)筋が通っていることである。そして、間違いなくおもしろい。
 戦前・戦中・戦後という日本の近代史について、違う見方ももちろん成立しうると思うが、一つの世界観としてここまで完結しているものは、他にはあまりないだろう。
 あと、驚くのは、数字や月日が正確に書かれていることである。自らを律して、しっかり記録、記憶しておかなければ、こういう数字がすらすら出てきたりはしないものである。その意味で、既に、俗人離れをしていることは間違いない。

 書かれている内容は、まずは軍隊時代で、陸軍参謀時代とシベリア抑留時代に分かれると思う。その後は、伊藤忠時代と土光臨調時代である。
 
 まず、興味深いのは、なぜ日本が戦争に突入したかである。戦争観は、結構簡明である。
 つまり、政治家の役割と軍隊の役割を分け、日本が石油禁輸措置、資産凍結措置を受けたことは、政治・外交上の失敗であり、そのような状況に追い込まれた以上、戦争は不可避で、「窮鼠猫を噛む」、すなわち、追い込まれてやむなく行った戦争であるとの認識である。戦争を行う以上、負けないよう戦術を練るのが参謀本部の仕事であることから、その職務を果たすべく邁進したというのが基本的立場である。
 ただ、支那事変を起こしてはならなかったし、三国同盟締結と南部仏印進駐はすべきでなかったと言っているのだから、軍にも政治外交にも責任があるといえるだろう。
 別に賛意を示すわけではないが、日清戦争、日露戦争によって得た権益を維持発展させるどころか、失いかねない状況にまで追い込まれた以上、当時の政治的為政者は、自ら屈服するという選択肢は取り得なかったのだろう。
 また、東条英機が首相になった背景も、昭和天皇の和平方針を受けて、軍に対して影響力のある東条が首相として選任されたとの立場を採っている。
 
 伊藤忠時代の挿話では、小菅社長の話がおもしろい。「商売をする者は会社には腐るほどいます。そうした中で、伊藤忠は商社としてどのように進んでいったらいいのか。それをしっかり研究し、そう言う観点から、私ども会社の首脳部に助言をし、補佐をしてもらいたい」と瀬島氏に言ったそうだ。なかなかの見識と思った。
 なお、業務部長は、どの商社でも社長直属だそうだ。仕事のイメージが湧かないが、瀬島氏は、まさに「参謀本部」であるとしている。

 財界活動というか政治活動、とりわけ日韓の関係の正常化についての挿話もおもしろく感じた。
 中曽根氏の意を受けて、瀬島氏の人脈で隠密外交で地ならしをした話を読んでみると、このような人物が、実は、現在の政権与党の民主党に欠けているのではないかとの思いに至る。
 
 ハバロフスクにシベリアで亡くなった人のために慰霊塔を建てた話も立派と思う。言うのは簡単だが、本当に実現できる人はなかなかいないものだ。 
文庫化を希望する ★★★★★
瀬島批判をされる論客もいますが、私はこの人を支持します。大本営参謀として日本のために当時の陸軍の中枢にいて、できることを全力でやってきた、それを「本分を守る」と自身は表現していますが、まさにそれだけのことだと思います。瀬島氏より志も能力も劣る後世の批判者が、氏の当時の仕事に注文をつける資格などありはしない。
心に残ったエピソードは、アッツ島玉砕のくだりです。日本兵2千5百が最後の通信後、無線機を破壊して米軍1万2千に突撃し、全滅。天皇は「アッツ島部隊はよく戦った」と、人も通信機器もない島に向けて電報を打てとおっしゃった。母親は死んだ我が子の名を呼び続ける、陛下はそのような気持ちなのだと分かり、瀬島氏は涙が止まらなかったそうです。
大東亜戦争に関しては、ギリギリまで戦争回避を目指していたが、石油の輸入ができなくされてしまい、勝算が無くても戦争を始めざるを得ない状況に追い込まれた、従って侵略戦争でなく窮鼠猫を噛む戦争であったこと。
また、戦後の東京裁判は戦勝国の報復裁判であったこと。
こうした内容について、テレビ番組の語りを活字に起こした書物であって、平易であり、非常に分かりやすい。戦争を礼賛し、正当化するものではないが、先人達は命がけで国を守ろうとした。そうした歴史は、右も左も真摯に、かつシンプルに受け止めるべきだと思う。
是非文庫化して、多くの若い世代に読まれるべきである。
日本の近代史、外交問題の本質がわかる ★★★★★
 本のタイトルになっているテレビ番組に瀬島龍三氏がゲスト出演した回をまとめたもの。
 瀬島氏は、陸軍参謀~シベリア抑留~伊藤忠商事の中興~行政改革(土光臨調)への参画と、数奇な人生を送り、山崎豊子の小説「不毛地帯」のモデルにもなっている。
 この「不毛地帯」を読んでから瀬島氏に関心を持ち、氏に関する種々の本を読んだが、この本が最もコンパクトに氏の想いや考えがまとまっており、かつインタビュー形式で読みやすくお勧めである。2時間程度で読めるボリュームもいい。
 日本の近代史や外交問題の本質を、生き様を通じてわかりやすく解説しており、特に(私もそうだが)戦争を知らない世代は一読の価値があると思う。
日本人の本分を大切に ★★★★★
このテレビ番組は、我々日本人の歴史の遺産とも言うべき内容だったので、本になって出版されるのを待ってました。
歴史観はそれぞれ自由な考え方がありますが、瀬島さんの言う、「日本人という”本分”を意識しながら、人生を一生懸命生きて欲しい」という言葉は、心に残ります。

先の大戦の呼称は、自分の国が政府決定した名称を使いますか、それとも外国の政府が使った呼び方を使いますか。日本人ならどちらを選びますか。そんな事を考えながら、多くの方に目を通して欲しい一冊です。

迷走するすべての日本国民へ ★★★★★
戦前、戦中の日本の歩みとその後の米国による占領政策について深く考えさせられる一冊。他国と戦争せねばならなかった背景と、弱体化した現在の日本の経緯などを知り、我々は今何をしなければならないのかを悟らせてくれた。
日本経済を憂う全ての国民に読んで頂ければと思います。