最盛期のトロワ
★★★★☆
『中世ヨーロッパの都市の生活』です。中世ヨーロッパと謳っていますけど、実際に書かれているのは1250年のフランスの都市、トロワです。
えーと。中世ヨーロッパ、と一言で言っても、漠然としすぎているものです。時代はいつなのか、場所はどこなのかによって、違いは大きいです。最大公約数的な概説書だと、全体像をなんとなく思い浮かべるにはいいかもしれませんが、細部については別途史料を渉猟するしかありません。
そこへくると本書は、「1250年、トロワ」ですから、ピンポイントです。
書かれている内容も、主婦の生活、出産、結婚、葬儀、商人、医師、建築、学校、演劇、そしてシャンパーニュ大市と、生活に密着したものです。
記述はきわめて具体的なのですが、さすがに1250年トロワにピンポイントで焦点が当たっているので、前後のいきさつ等については説明不足があります。
最盛期のトロワを描いたものではありますが、そこから、中世ヨーロッパの世界観、雰囲気を感じるには十分だと思います。
ヨーロッパ中世の生活が、具体的に描かれています
★★★☆☆
ヨーロッパ中世の都市住民の生活を、ルポルタージュ風に描いたもの。1250年のフランス・トロワの街をモデルとして、主婦や子どもの生活、医者や職人の仕事風景、結婚や葬儀、食事といった風俗などを、細かく説明してくれています。
ヨーロッパの中世とはどんな時代だったのかということが、私の最近の興味だったために、たまたま本屋で目にとまった本書を手にとってみました。生活の具体的な場面が細かく描かれているために、庶民の生活がイメージできたことが収穫でした。歴史を知る上で、当時の具体的な生活風景のイメージをつかむことは重要だと最近思っています。ただ、生活風景は、一般的な歴史概説書では扱っていないことが多い気がします。本書では、その穴を埋めるように、当時のようすが目に浮かんでくるような具体的な生活の叙述が多く、参考になりました。
たとえば、教育にかんすること、医師や職人にかんすること、または街の具体的な構造などさまざまな当時の生活状況を読んでいくと、中世ヨーロッパでは教会が人々の生活を、ほとんどといっていいほど掌握していたことが自然とイメージされてきます。
ただ、何ゆえにそうした風習や習俗があったのかという点にかんしては、ほとんど説明がありません。そのため、読んでいる間中、疑問がいくつも浮かんできました。そのことが消化不良にはなりますが(これが星3つの理由です)、私のようにこの時代の歴史についてほとんど知識がない人にとっては、当時の状況をリアルにイメージできる入門書としてよいと思いました。