指導者の姿
★★★★☆
機は熟していた。レーガンは軍縮交渉の相手を探していた。ゴルバチョフが登場して総てが始まった。
ゴルバチョフは共産主義に全幅の信頼を置いており、理想のソビエト連邦を築くために東欧諸国の自立を望んだ。共産圏の指導者たちにとって、まさに驚天動地の事態であった。自らの力で自国を運営するという当然のことが、彼らには受け入れがたいことと映った。
東欧諸国は、現体制の下で事実上破産しており、方針転換は必至のことであったが、ゴルバチョフの思惑をはるかに越えて、下からの変革の波は、速やかに波及する。
指導者とはこのようなものかと思わされる場面が多々ある。
平和主義者としてのレーガンの像には目を瞠った。為すべきことを自覚した人間の姿を見た。レーガンの後を襲ったブッシュの忍耐力にも驚嘆した。もし彼が自重できず、逸ったとしたら、多くの国での、無血の体制移行などありえなかっただろう。
共産主義国家の無慈悲きわまる体制については、知識として記述されていても、感触としては理解できない。だが、そうであったとしても、巨大な圧力に抗して、ゴルバチョフが共産主義の理想を信じ、大鉈を揮ったことはよくわかる。確かに彼には大義があった。
時系列に沿い、小さな章の連なりから東欧革命の全体がよくわかる。細部に及ぶ記述の中には、驚くようなことも多かった。共産圏の優等生と思われてきた東独が、破産間際であった事実には唖然とした。
それにしても、何と魅力的な人物の多いことか! どこか明治維新前夜を思わせる。指導者同士のつながりのなかにも、単なる利害を超えた自国への思いを感じ、しばし考え込んだ。