あの山田章博さんが!!
★★★★★
◆「人魚變生」(山田章博)
1979年に同人誌で発表された作品。
私にとって山田章博さんといえば、『ロードス島伝説』や『十二国記』のイラストレーターという
印象で、本作のような幻想的で耽美な漫画を描かれていたとは、寡聞にして知りませんでした。
一見すると、現在の画風とはかけ離れた絵柄とも映るのですが、
西洋人の船員たちには、現在に通じるようなバタ臭さがあります。
一方、ヒロインである人魚や女性キャラを描く描線はシャープで、なまめかしさの
なかに、憂いを含んだような表情は、どこか山岸凉子を彷彿とさせます。
妖しくも美しい、蠱惑的な人魚の色香が全編を覆い、
そこに主人公である船医の悔悟がひとさじ加えられます。
夢幻を喪失することによって逆に、永遠に囚われてしまう――。
ほろ苦くも甘美な幻想譚です。