フランチェスカ・リア・ブロックの文章は、映画を観るようだ。
ウィーツィ・バットの魅力は、読んでみなければわからない。ポップとかキュートなんて言葉に惑わされず、一度自分で確かめて欲しい。
確かに、ウィーツィは魅力的な女の子で、物語自体も『ありえない！』という方向に展開していく。しかし作者、リア・ブロックは夢の世界だけを描かない。主人公達は強烈な現実にぶつかり、時には怯みながらも、勇敢に立ち向かう。リア・ブロックの作品はいつも愛に満ちている。その愛の形態は様々であるが、どれもとても優しい。この作品でリア・ブロックの世界に興味をもたれた方は、是非リア・ブロックの短編集『少女神第９号』も読んで欲しい。
また日本語訳版においては、金原瑞人さんの訳が、とても良い。彼の訳文がリア・ブロックの詩世界を、瑞々しく読者に伝えてくれている。

まるでポップミュージックみたいな小説だと思った。メロディーもリズムも心地よく自分のなかに入ってくる。しかもありきたりじゃないし、緻密に作りこんである。いつまでもその世界に浸っていたくなる。

ブロックの小説が現代のフェアリーテイルって言われるのは、たぶん読んだあとにあったかい気分になって、世界のキラキラが見えるからだと思う。いろんなものに対する「好き」のきもちを、すこし信じられる気がする。