待ちに待った文庫化で巨人の生涯を概観。
★★★★★
徳島県出身の人類学者、鳥居龍蔵博士の評伝。
筆者は、戦中の北京在の経験を生かし、鳥居博士の海外調査(特に、
現在の内蒙古、満洲)を通じリベラリスト鳥居を活写する。
ただ、惜しむらくは、鳥居博士の調査が膨大多岐にわたることからであ
ろうが、数次に及ぶ調査のそれぞれの学問的位置づけの分析に弱い。ま
た、考古学者の人名等些細な記述漏れも目に付く。
しかし、筆者の鳥居博士とその家族へのまなざしは、鳥居博士の戦中戦
後の行動の清廉さとあいまって、とても暖かく感じられ、読後感は心地
よく、空前にして絶後の学者を知る好著。