今はいなくなった魅力ある人々
★★★★★
著者の代表作といえば『「南京大虐殺」のまぼろし』になってしまうんだろうが、著者が最も得意としたのが歴史に埋もれてしまった人物の発掘で、この本は一旦はボツった原稿が再び日の目を見たといううれしさも手伝って著者が喜々として筆を運ぶ姿が目に浮かぶようだ。
序章で彰義隊群像という形で幕臣らのその後を描き、佐久間貞一、横山松三郎、岸田吟香、山崎寧、高木正年、柴四朗、浮田和民ら七人を紹介する。マニアックな感じがするかもしれないが、七人は山崎寧以外は生前かなり知られた存在であった。彼らは歴史も動かさなかったし、英雄とも天才とも言われなかったし、栄光の座にもつかなかった。しかし彼らがいかに心から愛すべき日本人であったかを著者は切々と語る。我々はこの約百年の間に何を失ったのかを考えさせてくれる。