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大杉榮 自由への疾走 (岩波現代文庫)

価格: ¥206
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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労作ではあるが… ★★★☆☆
“自由を求めて国家権力と戦った悲劇の英雄”
 本書を通して浮かび上がってくる大杉栄の人物像を簡単にまとめるとこうなるだろう。それは、大逆事件のシーンから説き起こし、甘粕事件及びその後日談でしめくくるというストーリー構成から如実にうかがえる。

 しかし、大杉とはそんな生真面目な男だったのだろうか? 「反権力」という分かりやすい図式に押し込められてしまい、自らに横溢するエネルギーを打ち上げ花火のようにパーッと爆発させる破天荒な彼の姿が見えてこない。「自由」という言葉にしても、鎌田氏が使うと陳腐な正義に転化してしまう。せっかく魅力的なタイトルをつけているのに、この言葉に込められたはずの疾走する躍動感が全く伝わってこない。
 資料を丹念に調べ上げた努力ち?大いに買う。だが、鎌田氏の筆致は硬くて息苦しい。社会悪の追求はできても、人間そのものの面白さを生き生きと活写するのには向いていないのではなかろうか。