留学生を送り出す側も迎える側も心のケアまでフォローするノウハウを
知らない中で、神童・渡辺茂夫は何かに追い詰められ、壊れていった。
自殺未遂から脳に障害を残した渡辺茂夫氏は世間からはとうに忘れ去られた
存在ではあったが1999年8月まで存命であった(享年58歳)
この最晩年の茂夫氏と父・季彦(すえひこ)氏の様子がTVのドキュメンタリー
で放映されるのを見た事がある。
少年時代の茂夫氏は、感情を顔や声に表さず、内面を他人に容易に見せない
人物に見えるが、それとは対照的に、晩年の茂夫氏は障害をもちながらも
ヒトらしい表情をしていたと思った。
この父と子は最初の十数年に失った多くのものを40年かけて、
ゆっくりと取り戻していったのだと思う。