しかし、著者の筆は極めてジャーナリスティックにこの秘密組織の姿を描き出している。彼女自身が、ボーンズのあるイェール大学の出身であり、ボーンズと似たクラブの出身である。、彼女の文章からは、アメリカの「学生クラブ」(フラタニティ、友愛会)はどのような存在なのかと言うことが日本人にも伝わってくる。
「どくろと骨」と言うことで、怪しげなものを感じるかもしれないが、そのネーミングは我々日本人に、クラブ名に「桜」とか「菊」とか使うようなものと大差ないと判る。文化の違いだ。19世紀には、それこそ多くの学生クラブがあり、現在もギリシャ語の頭文字を頂くクラブは多数ある。
著者が言うように、このようなエリートたちが集う秘密クラブは、その排他性ゆえに、メンバーの間の特権意識を生み出し、メンバーの間の「強い友情」を作り上げる。これが、大学を卒業してからも、OB会としての強固なネットワークとして機能するのだ。言ってみれば、ボーンズは大きいところでは、早大雄弁会と変わらない。ただし、ボーンズ利権のスケールは相当に大きい。
ちなみに、映画「キューティ・ブロンド」は、女子学生クラブ(ソロリティ)を舞台に、アメリカのコネ社会の実像を少しだけ描いている。著者は、ソロリティについての著作も書いている。今度は此方も邦訳で読みたいが無理だろう。
ただ、陰謀論を排除する彼女の著作が日本の名だたる陰謀論者である、太田龍氏によって紹介されるというのはなんとも皮肉である。