入試の現代文は、単に日本語が読めれば解けるという単純なものではなく、そもそも論じられている問題に関して一定の学問的・教養的背景がなくては理解できず、そうした知識は現行の高校の国語教科書からはほとんど得られない。かといって、実際に岩波・中公新書などを読み漁る受験生などいないだろうから、結局は入試問題をこなす過程で、あるいは予備校の授業を聞きながら、知識を入れていくということになる。そうした作業を独力で出来るように書かれたのがこの本である。こうした意図の本は最近増えているが、この本は本物であり、買っておいて間違いはない。そして、大学に入ってからもかなりの所まで役立つ本である。専門バカになる前に、一通りの現代社会の諸問題の概略を知ることができる。知的な会話のタネにもなるし、就職試験や就職活動にも役立つような知識が詰まっている。つまりは、一生ものになる本である。あるいは、知の旅に踏み出した後に、常に戻って来るべき出発地とでも言おうか。
ここから各分野の原書に進んでもよいし、更にワンクッション置きたいならば『小論文テーマ別課題文集 21世紀を生きる―頻出16テーマ』(駿台文庫)などに進むのも良いであろう。受験生であれ、大学生であれ、社会人であれ、ちょっとでも「自分は頭がいい」と思っている人ならば、この本に書かれている知識が頭に入っていないと、ちょっと悲しい。