60年代末のフランスの薫り
★★★☆☆
邦題のイメージと内容が全く異なっていた。結構重くてシリアスなあらすじ。
アニー(J・シムカス)は、多感な女学生。彼女と同居しているのは、母親と伯母。伯母のジタが、突然脳卒中で倒れ危篤状態になる。アニーと母親は昼間は看護師にまかせ、夜間は交代で伯母を看護する。
日本と、フランスの医療の事情がかなり違うので少しとまどった。救急車を呼ぶのではなく、主治医が往診して治療する。病院に入院しない。今でも救急車の出動は少ないらしいので、医療制度の違いなのかもしれない。
アニーは、愛する伯母の死を目前にし、毎日神経をとがらしていき、周囲にもあたる。シムカスは、何事にも敏感で潔癖な年頃をよく表現していた。
ある晩、彼女は「死」を避けるように、夜の街を彷徨い歩く。「死」への恐怖。愛する者が「死」に至ることを受け入れられない。写真でしか知らない、スペイン内戦の闘士だった父の「死」が、彼女に暗い影を落としている。「死」を日常茶飯事のように軽く話す警察官にも激しく抗議する。学生運動が盛んだった当時の、日本の若者のミューズだったのが少しわかったような気がする。
ラストシーンのシムカスの表情が、すごくよかった。彼女が心身共に「大人」になり、繊細で多感な時代からの成長。「生」の喜び(赤いミニカーが象徴)を知り、誰にもやがて訪れる愛する人との「死」と別れを自然に受け入れたことがわかった。
シムカスは前半の髪を結わえた姿よりも、髪を下した姿の方が断然美しい。
この作品の中で、シムカスはセミヌードを披露していた。画質は綺麗だった。特にこのシーンは一番美しい。
「冒険者たち」しか彼女の作品を観たことがなかったので、この映画は初めての鑑賞。
テーマや話の展開は、若い人には退屈かもしれない。60年代末のフランスやヨーロッパの情勢、ベトナム戦争中の時代の雰囲気やファッションなどにも興味がもてた。
ジョアンナ・シムカスが放つアンニュイ、そして瑞々しさ
★★★★☆
ロベール・アンリコ監督&フラントワ・ド・ルーベ音楽といえば「冒険者たち」、聖三角形の頂点で散っていったレティシアを演じたのがジョアンナ・シムカス、
60年代のフランス映画界のミューズとしての、一瞬の輝きだった。
(後にシドニー・ポワチエ夫人に、、、)
高校時代に見た彼女の映画、それもこんな小品が再び見られるとは、、、。
原題は「ジタ伯母さん」邦題は彼女のイメージを前面に出したもの、
ジョアンナ・シムカスが海洋アドベンチャーから打って変わってビィビッドな青春物語を演じる。
突然病に倒れたジタ伯母さん、いたたまれずに飛び出した夜の街で出会う人々との交流、、、。
ド・ルーべも「冒険者たち」の激しいピアノタッチから一転、繊細なストリングス演奏で
映像を彩る。上映当時はこのテーマ曲も大いにヒットした。
決して名作というほどのものではないこの映画、彼女のフォトジェニックな魅力でもっている。
60年代、所詮時代の映画ではあるが、同時代を過ごした人たちにとっては何ものにも換えがたい記憶が立ちのぼってくることだろう。
ジョアンナ・シムカスの名を永遠に刻み込ませた記念碑的作品。
★★★★☆
ジョアンナ・シムカス、我々の世代以上の映画ファンには、やはり切なさを以て記憶される女優だ。
今作はデジタル・リマスター版での再販。これは予想以上の美しさ、十分評価できるクオリティだ。
ロベール・アンリコが、シムカスを舐めまわすように撮り続ける。全編これ彼女の魅力が横溢するプライベート・フィルムみたいな感覚。
詩情的で繊細だが、どちらかと言えば“死”のイメージがつきまとう暗い映画だし、シムカスと言えば、まず世評的には「冒険者たち」なんだろうが、でも、この一作で、カナダ出身の彼女は、フランス映画界の“ミューズ”となり、映画ファンの間で永遠に思い焦がれる存在になってしまった。
その後、僅か数年後にシドニー・ポワチエと電撃結婚し、潔く引退してしまって以降は、その名前は更に神話性を持った気がする。
自分がシムカスを知ったのは引退後だったが、80年当時でも周りの映画好きの中には、必ずシムカスの大ファンがいたものだ。
この映画を語るのに能書きはいらない、ただただ彼女の憂いを帯びた表情と美しさ、一挙手一投足を追い続ければそれだけで十分じゃないかと思う。
蛇足だが、アンリコとシムカスは当時恋愛関係にあったのは有名。今作で、ベルナール・ブレッソン以下男優たちが、皆いわゆる二枚目ではないのは何か意味があるのかな、アンリコは、意図的にやったんだろうか。
村上春樹の大好き映画
★★★★★
今は亡き文藝春秋の「TITLE」誌の対談で、村上春樹氏が思い入れのある映画として語っていた本作。羊も出ます!(笑)今回のリマスター版、かなりみずみずしい画像でGOOD! おまけに特典のポストカードがジョアンナ・シムカスの……おおぅ、いいの、コレ!? ファンにはたまりませんね。
期待したいけど…
★★★★☆
この販売メーカーは先月、ニューマスター版と銘打ったタイトルのDVDを数点発売しましたが
どれも既発売品と変わらない粗い画質だったので正直不安です。
今回は”HD”ニューマスターとわざわざHD化を強調してるのである程度はよくなってると
思いたいですね。
買う人はその作品のファンなのでニューマスターでもHDニューマスターでも画質が上がってるなら
買い直してでも観てみたいところ。
その心理につけ込んで粗い画質のままのニューマスター版作品数点をまんまと買わされた者としては
この販売メーカーを素直に信じられないのが本音。
ただこの映画は旧版が絶版状態なので再発売自体が評価に値しますし、なによりいい作品なので
画質うんぬんは二の次に観る価値があると思います。
作品評価を下げたくないので☆4つ、マイナス1つは販売メーカーの姿勢。