新年になると、ほとんどのオペラ・ハウスがヨハン・シュトラウスII世のもっとも有名なオペレッタを上演する。作品の持つ祝祭的な気分が時節柄にぴったりなのだ。1983年12月31日、コヴェント・ガーデン王立歌劇場で行われたこの公演も、その伝統を踏まえたもの。豪華キャストが魅力的で、主演はヘルマン・プライとキリ・テ・カナワ。この2人が演じる夫婦は、結婚生活を全3幕にわたって繰り広げられるドタバタ騒ぎにさらされる――演じている当人たちが観客と同じぐらい楽しんでいることは間違いない。プラシド・ドミンゴは堂々たる指揮ぶりでコヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団から好演を引き出している。オルロフスキー公爵が第2幕で開くパーティーの場面では、意外な「ゲスト」で観客を驚かせるのが恒例となっており、毎回さまざまな趣向が凝らされてきた。今回もあっと驚く人物が登場する。「忘れじのおもかげ」を手始めに、十八番のシャンソンを次々と披露してくれるのは、フランス人歌手のシャルル・アズナブールだ。続いてダンサーのマール・パークとウェイン・イーグリングが登場、愉快なパ・ド・ドゥを披露する。その派手な振り付けは、サー・フレデリック・アシュトンによるもの。（Kevin Filipski, Amazon.com）