シェイクスピアの原作ではマクベスの死後、ダンカンの息子マルカムがスコットランド王になるところで終わっている。しかし、この映画では新マルカム王の弟のドナルベインが魔女の住む荒野に現れ、魔女の住処に入ろうとするところで終わる。そういえば、魔女らの桊??後の予言すなわちマクベスが殺した武将バンクオーの子孫が王になることは未だ実現していない。ドナルベインの魔女らへの接近はこれからも続く殺戮の歴史を暗示しているのではないだろうか。また、このドナルベインの足が不自由で引きずりながら歩く姿はシェイクスピアのもう一つの悲劇「リチャード三世」の主人公グロスタを連想させる。グロスタが冒頭で以下のように独白している、 “And that so lamely and unfashionable that dogs bark at me as I halt by them”「なにしろ片脚が短くて不恰好だから、よたよた歩いていると犬が吠えかかる。」
もっともマクベスとリチャ-ド三世では四世紀ほども時期がはなれているため、勿論ドナルベイド=グロスタではない。
ロマン・ポランスキー監督はこれからも繰り返されるマクベス同様に醜い王位略奪者の出現と暗黒の歴史を暗示しているように思う。