とくにカラヤンの演奏が出だしからとても自然で、70年代のようなキリッと締まった演奏ができていないものの、それが逆に聴きやすくなっています。
ドン・ジョバンニ役の人は悪魔的な存在感は強くないのですが、逆にこの役に潜む人間性をこの演奏で感じることができました。他の役の人もそれぞれ持ち味がよく出ていると思います。
星4つとしたのは、NHKで放映された映像と比較し、部分撮りした部分を一部差し込んでいるなど映像の自然さが一部損なわれているためですが、それでも、モーツァルトの名曲をこの映像作品で堪能することはできるかと思います。
主役のドン・ジョヴァンニのサミュエル・レイミーは歌はもちろん素晴らしいが、真面目な印象で、地獄へ落とされる程の悪者ぶり、好色さに欠けるような気がした。石像に対し、恐れることのない度胸はなかなかいい。「カルメン」の闘牛士役の時のイメージ。
レポレロ役の方が、女好きそう。
ツェルリーナのキャスリーン・バトルは若いせいもあろうが、3人の女性の中でも可愛らしさが秀でている。彼女がこの作品を引き締めているかも、というあくまでも個人的な感想。
モーツァルトの作品にしては、一般に親しまれた曲が少ないが、第2幕の中で「フィガロの結婚」の「もう飛ぶまいぞ、恋の蝶々君」が歌詞を変えて、レボレロのアドリブ的な(アドリブでは無いが)台詞と共に出て来るのが楽しい。