長らく1986年発行の第六版を愛用してきました。冊子の広辞苑は気軽に引けるものではありませんでしたので、引きやすい旺文社国語辞典で間に合わせることがほとんどでした。語義、解説は明鏡などの最近の辞書や大型辞書に比べると良くも悪くもあっさりしていますが、普段使いの辞書としては過不足がなく、信頼のおける辞書でした。

最近は手軽さから私も電子辞書や、インターネットの無料辞書を使うことが多くなっています。広辞苑や大辞泉など、二十世紀には普通の人は購入を考えることすらしなかった辞書を、今は普通の中学生、高校生が普段使いの辞書として使っています。iPhone の登場で大型辞書を文字通り肌身離さず持ち歩ける時代になりました。精選版日本国語大辞典や百科辞典ですら一台の電子辞書に収まり、それらすべてを同時検索して語義、解説を比較できるようになっています。

電子辞書、インターネットの時代の「紙の辞書」として四冊（旺文社国語辞典、三省堂国語辞典、三省堂例解新国語辞典、ベネッセ　チャレンジ小学国語辞典）選び、時間のあるときに引き比べています。

旺文社国語辞典第十版は「際立った特徴が無い」のが特徴です。電子辞書も含めた複数の辞書を引き比べてみると、旺文社国語辞典は語義、用例に癖がなく、安心して使うことができるものであることが分かります。日常生活で遭遇することばであれば、この辞書に収められた８万２千語で十分です。大型辞書、あるいは明鏡のように時に詳しすぎる説明よりも、旺文社国語辞典のような限られた紙面に納めるために研ぎ澄まされた説明の方が良いことも多々あります。

「小型版」はＡ６版という紙面のサイズだけでなく、「辞書の厚さ」も抑えられていています。ほぼ同じページ数の三省堂国語辞典(１６１６ページ;本書は１６３０ページ)に比べても薄く、背が丸められているので手によくなじみ、抜群の引きやすさで「小型辞書はこうでなくては」と感じます。

収録語数の増加、詳細な解説などは他の辞書や大型辞書にまかせ、今後も「信頼のおける、使いやすい小型辞書」として改訂されていってほしいと思います。

なお、紙面も文字も小さいので視力に自信の無い方、あるいは辞書に書き込みをしたい方にはＢ６の普通版をお勧めします。