演奏は100点、映像は???
★★☆☆☆
しかし、何、この演出!日本人として、私は受け入れがたい。
時代考証以前の問題だ。
中国風の家屋に、荒廃した庭。どこにも日本の面影はない。
それになんと言っても幕切れの蝶々さんの恐ろしい行為。
異国趣味のプッチーニの音楽もぶっ飛んで、あんぐり口を開いてしまいます。
ポネルは超一流の演出家なんだから、もう少し日本について取材して欲しかったです。
思えばアイーダやトゥーランドットなど、私たちがいいな〜と思う演出でも、
舞台となる国の人たちは同じように、
自分の国の扱いを苦々しく思っておられるんでしょうね。
音楽は本当に素晴らしいのですが、
ロンドンからカラヤン・ウィーン・フレーニ・パヴァロッティの名盤があるので、
そちらを買われる方がいいでしょう。
映像も、これよりヴェローナのチェンドリス盤の方がずっとましです。
ポネルの大胆なオペラ映画
★★★★★
これほどアッと驚くような映像が続く『蝶々夫人』は他にないでしょう。ポネルの大胆な演出のオペラ映画です。冒頭はセピア調で何かから逃げるピンカートン(プラシド・ドミンゴ,33歳)。大変なことが起きたようです(最後につながります)。カラーに変わると、物語の始めです。
15歳の蝶々さん(ミレッラ・フレーニ,39歳)は顔面白塗りで驚かされますが、母親も同様の白塗り。縁切りを宣告にやって来る叔父は隅取りの強い悪者のメイクですし、求婚者のヤマドリは白塗りの伊達男。
スズキをクリスタ・ルードウィッヒ(50歳)が歌っています。第二幕では蝶々さんは白塗りではありませんが、ピンカートンを迎えるときになると結婚初夜の白無垢の衣装を着ます。あの夜に戻りたいという想いからです。そのときにまた白塗りに戻ります。
丘の上の蝶々さんの家が荒れ果てた野原に一見軒建っています。その非現実的な印象が強烈です。満天の星をみながら抱かれる蝶々さんの映像もスコア通りですし、ポネルの読みの深さを感じさせます。指揮のカラヤンも絶好調です。