ポネル演出炸裂!
★★★★★
結局のところ、このDVDの評価は演出を、どう解釈するかで決まってしまう。
舞台となる蝶々さんの家は、お庭は草ぼうぼう。
よく見ると屋根瓦も草ぼうぼうで、なんとも詫びれた雰囲気がただよう。
音楽が、はじまると、いきなり逃げ回るピンカートン。なぜ? そんな話だっけ?
家の中に踏み込むと、まるで迷宮、異次元空間に迷い込んだようだ。
ふすまは、まるで生き物のように動き、奥には不思議な世界が広がる
狐に取り付かれた蝶々さん。ゴローはネズミ男のようだし、凧は一反木綿、坊やは子啼き爺を連想させる。
不意に現れる歌舞伎役者、そう、これは、まったく水木ワールドである。
これは、もはや蝶々さんの悲劇でなく、不気味な幻想の世界に迷い込み必死に逃げるピンカートンの物語なのだ。
天才ポネルの驚きの演出と見た。
あまりにも日本を知らなさすぎる演出が残念。
★★☆☆☆
カラヤン、フレーニ、ドミンゴと、音楽は本当に素晴らしい。
しかし、何、この演出!日本人として、私は受け入れがたい。
時代考証以前の問題だ。
中国風の家屋に、荒廃した庭。どこにも日本の面影はない。
それになんと言っても幕切れの蝶々さんの恐ろしい行為。
異国趣味のプッチーニの音楽もぶっ飛んで、あんぐり口を開いてしまいます。
ポネルは超一流の演出家なんだから、もう少し日本について取材して欲しかったです。
思えばアイーダやトゥーランドットなど、私たちがいいな〜と思う演出でも、
舞台となる国の人たちは同じように、
自分の国の扱いを苦々しく思っておられるんでしょうね。
音楽は本当に素晴らしいのですが、
ロンドンからカラヤン・ウィーン・フレーニ・パヴァロッティの名盤があるので、
そちらを買われる方がいいでしょう。
幻の国のファンタジー
★★★★★
正直云って好悪がはっきり分かれる作品だと思います。なぜかピンカートンがTシャツだったり、乱入小父さんの歌舞伎まがいの姿…フレー二の大アップもつらい。時代を感じます。
それでも演出家のこの作品への愛がいたるところに感じられます。回想形式のオープニング、ススキの原がわびしい蝶々さんの家、溝口映画のような紗につつまれた映像…ポネルはこの舞台を現実ではなくトリスタンの孤島のような幻想の国として描いています。
大好きなのは有名な間奏曲の場面です。蝶々さんが夢の国アメリカに船で連れて行かれ、舞踏会で踊る夢を見る!…映画でしかできない演出で、観るといつも胸がいっぱいになります。必見です!