伝説の名演! ドキュメントとしても貴重であり、演奏としても超一級!
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1960年、シャルル・ミュンシュとボストン交響楽団の来日コンサートの記録。戦後日本の音楽界が経験した衝撃の一つに数えられるこのコンサートをDVDで観ることができるというのは、本当にありがたい。画像が今一つであることと、音質もそれほど良くないことは残念であるが、観ているうちにそうしたことが気にならなくなる素晴らしい演奏。もちろん、ボストン交響楽団の壮麗なサウンドがどれほどのものであったのか、この制約の多い記録からでも十分に伝わってくる。
ミュンシュの指揮の下、オーケストラは本当に良く歌い、ドラマチックでパッショネイト、これぞ音楽! ということを実感させてくれる。エロイカも素晴らしいが、特に『ダフニスとクロエ』は、クライマックスに向かって猛烈な疾走をするところ、ライヴならではのぞくぞくするような名演! この猛烈なテンポをボストン交響楽団のメンバーは、ミュンシュの名をもじって「ミニッシモ」と呼んでいたとのこと。ミュンシュの音楽は「骨太」「健康的」という表現で語られることが多いが、確かにミュンシュの指揮の下ではオーケストラが本当に良く鳴り、明るい見事なサウンドを生み出すから当然なのであるが、ミュンシュの独特のスケールの大きなフレーズラインと、クライマックスで時折見せる猛烈なエネルギーの発散と疾走感はむしろデモーニッシュな印象を与えるもの。本当に凄い指揮者です!
因みに、来日時のメンバー表が付いているので、一世を風靡したこのオーケストラの有名楽員が並んでいるのを見るのも楽しいです。後に日本フィルに交換楽員でやってきたヴィオラのハンフリーさんの顔も見えるのが、また知っている人にとっては嬉しいことです。
貴重な画像、鮮烈な音質、熱い演奏
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キネスコ(テレビ画面をフィルム撮影したもの)によるモノクロ映像にラジオ音源のステレオ録音をシンクロさせたNHKの得意技で楽しませてくれます。
映像のクオリティに限界はあります(付録のニュース映像は本来のフィルム映像らしく、モノクロながら鮮明です)が、録音は鮮明で、特に状態の良いテープが保存されていたという「ダフニスとクロエ」は申し分ありません。「エロイカ」は音質そのものは悪くないものの、テープの回転ムラが気になります。それでも1960年の放送録音としては良い方でしょう。
RCAの商業録音と比べると、RCA盤がカッチリとした音場に音がギッシリ詰まった感じなのに対して、こちらは平面的な音場で伸びやかさと空間への広がりがあります。集中力では遜色がありますが、楽器の質感は良く出ていますし、金管の輝きはこのDVDの方が上です。
ミュンシュは即興的な表現を好んだそうですが、エロイカのテンポはRCA盤よりも大胆で、特に第1楽章は顕著です。またダフニスもライヴならではの熱狂に引き込まれます。全体的に健康的な逞しさに貫かれ、神経質とは無縁の緊張感が快い。ケネディの大統領選挙の年のアメリカの、ポジティブな明るさが反映してるとさえ思えます。
尚、エロイカはホルンを倍管にしています。解説(宇野功芳)の5本というのは誤りで、記譜上3本を6本にしています。
演奏会は聴衆のいるライヴですが、放送用のもので曲頭にアナウンスが入ります。また演奏に先立って日米両国の国歌が演奏されます。起立して聴く聴衆の中に、当演奏会に御臨席された皇太子殿下御夫妻(当時)や、半年後に暗殺される浅沼稲次郎社会党委員長のお姿も収められています。
記録が残っていて良かった!
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こんな記録があるとは知らなかった。名演である。フルトヴェングラーばかりが名演ではないと思わされた。