貴重な映像記録!!! 制約はあれど、やはり持っていたい!
★★★★☆
これは1963年9月26日、シャルル・ミュンシュが Orchestra de Radio−Canada を指揮したもの。スタジオで収録された放送用の記録であり、映像は白黒、聴衆はおらず、ステージも簡単なセットの仕掛けがなされ、オーケストラの配置などに少しばかり演出がなされている。
肝心の演奏そのものに関しては、どうのこうの言う必要はない。ミュンシュならではの、起伏の大きいドラマティックな演奏。最後まで引き込まれてしまう見事なもの。ともかく良く歌う! 良く歌い、そしてクライマックスで爆発的なエネルギーを放射して、屡々物凄いテンポで疾走するミュンシュ独特の演奏スタイルは、ここでもはっきり見て取ることができる。ただ、ミュンシュとしてもレコードの録音が多い「幻想交響曲」であるから、この演奏の特徴を大まかに言うならば(聴衆のいない収録であるということが大きいと思われるが)、指揮ぶりがリラックスしており、演奏も白熱したものと言うよりは、幾分おとなしい響きとなっている、ということになる。これはもちろん、オーケストラの質にも依る。
残念な点を言うと、スタジオでの収録でなまじ演出が可能となった故であろう、カメラワークがうるさく、撮すべき時に撮すべきものを撮し損ない、ショットのリズムが音楽と合わないので、はっきり言って邪魔なだけ。それから、時代としても映像は今一つ良くない。それでも、何しろ伝説の大指揮者の演奏姿を、それも十八番とも言えるベルリオーズの「幻想交響曲」で観ることができるということの喜びに較べれば、大抵のことはどうでも良いであろう。このようなDVDに手を伸ばすような人は、そうしたことは重々承知のことであると思う。但し、このDVD、もともとはモノラルの音声であるが、「エア・ミックス5.1サラウンド」という加工がしてあり、音質はかなり向上している。これと同じ演奏と、もう一曲Les Nuits D'Ete という作品も収めた(歌手はマリリン・ホーン)DVDもあるが、こちらは音声はモノラルのままとのこと。その意味でも、このDVDはお薦めです!