大沢在昌には、第4作で直木賞も受賞した「新宿鮫」シリーズに代表される社会問題を反映させた硬派なハードボイルドと、「アルバイト探偵」シリーズのような若者を主人公にした軽いタッチの著作がある。本書は後者にあたる作品で、恋愛や友情を織り交ぜながら、謎を解いてゆくというポップな青春ミステリーである。物語前半は絵の秘密を探る推理が、後半では問題に立ち向かう冒険が描かれており、読む者を引き込むストーリー構成となっている。ちょっとエッチで純情なホステスや、髪を7色に染めたゲイバー勤めのジャンキーら現代的な登場人物も魅力的であるが、本書の一番の読みどころは、謎を解くカギに70年代のヒッピー文化を据えた点であろう。現代の若者と、かつて若者であった人々の心の触れ合いが、「おもしろい」というだけではない、読後の充足感を与えてくれる。(冷水修子)