ドラマとサスペンスとアクション満載の「キッドナップ」は、緊張感のあるミステリーの要素をすべて備えている。裕福な家庭の10代の息子が誘拐され、コンラッド・ケイン（「普通の人々」のティモシー・ハットン）とエリー・ケイン（「チャイナ・ビーチ」のダナ・デラニー）の夫妻は反逆者の探偵ナップ（「シックス・フィート・アンダー」のジェレミー・シスト）を雇って、息子を取り戻そうとする。ナップは荒っぽく、被害者を救うためなら法を犯すことさえいとわない。しかし対人関係には長けている。家に押し入られた老女が尋ねたように、「ナップだなんて、いったいどんな名前なの？」彼女はいいところをついている。有名な人でない限り、自分のラストネームだけを名乗るのは非常にうぬぼれている。このNBCシリーズの13エピソードすべて――2006年から2007年のシーズン中に放映されたもの――がこの3枚組のDVDセットに収められている。そして1年以内に中止された多くの番組と異なり、「キッドナップ」は最終話と有限のエンディングを視聴者に用意している。
　誘拐を扱った最初の数エピソードは視聴者の心を引きつけるが、いくつかのサブプロットはうまく機能していない。エリーは著名な政治家と不倫をしているのか？　コンラッドは昔の愛人を殺したのか？　どちらのキャラクターも特に好ましいわけではないので、視聴者にはどうでもいいことだ。他の作品では素晴らしかったハットンも、ここでは役にはまっていない。タフガイのアクセントで話す（のを忘れなかった）時、貧しい地区から出て成功した男という役が全くしっくりこない。そしてデラニーは、襲撃者から身を守らなくてはならない時でもあまり騒がない上流階級の女性という役があまり本物らしくない（武器を扱うのに慣れている言い訳として、エリーは「ガンの撃ちかたは知っているの。わたしの父は共和党支持者だから」と言う）。他のキャラクターもまた、さまにならないセリフを吐く。FBI捜査官のラティマー・キング（「ゲット・ショーティ」のデルロイ・リンドー）は、捜査局に機密漏えい者がいると思うかと聞かれ、訳知り顔で「もしもアヒルのように歩いてアヒルのようにガーガー鳴けば……」と答える。ABCの「マーダー・ワン」同様、「キッドナップ」は多くの視聴者に忍耐力を持ち、数か月のシリーズにわたってドラマが展開していくのを見ることを求めている。問題は、やはり視聴率が低かった「マーダー・ワン」と違って、このプロットが忍耐力に応えるくらいのまずまずの説得力を備えていたということだ。（Jae-Ha Kim, Amazon.com）