その比較で書くと、まず、三人姉妹が二人姉妹として描かれ、二人の恋愛に焦点を当てて描かれている。こちらのマリアンヌは、バレエをやっているのか身のこなしにそれらしい品がある。また、兄夫婦は、こちらの配役が良く、見栄っ張りで気の弱い兄が妻の意向に振り回されて、何も援助できない様が良くでているし、エドワードの秘密婚約が発覚したときの取り乱し様も、こちらの方がその時代の女性にふさわしく見事で、一見の価値がある。
男優陣は、概してエマ・トンプソン版が良いが、ウィロビーばかりは、こちらに軍配が上がる。エドワードは堅物の感が強く、ヒュー・グラントと比較しては気の毒だが、ブランドン大佐は、一方のアラン・リックマンと比較するには、かなりタイプが違って演じられているように思う。アラン版のブランドンは、馬で行動し、穏やかなのだが、内実にかなりの情熱を秘めた人間として演じられているが、こちらのブランドン大佐は、年齢をかなり意識して、とにかく穏やかに穏やかに行動する辛抱強いタイプとして演じられている。エドワードの弟、ロバートもこちらの方が、見栄っ張りでルーシーと合うのがよく分かる。
それぞれに原作の良さをどのように抽出したか、その脚色ぶりは、オースティンを好きな人には興味のあるところだろう。ラストは、こちらの方が原作に沿っていて、地味な終わり方だが、しっとりとした優しさのある仕上がりである。