このディスクはヨー・ヨー・マのもっとも新しくかつ野心的な企て、シルク・ロード・プロジェクトを紹介する。このプロジェクトは数世紀にわたってヨーロッパと東方を結んでいた古代の貿易路、シルク･ロードに沿って栄えた文化を探求するものである。1998年にマによって設立されたこのプロジェクトが目指すのは、世界中のさまざまな地域の人々の間に、彼らが共有する唯一の言語である音楽を通して、関係や相互信頼を築き、文化交流を行うことである。

   このレコーディングにはモンゴル、中国、ペルシア、日本、イラン、アゼルバイジャンの音楽が含まれており、またこれらの国々に加えてアメリカの音楽家が西洋と東洋双方の楽器を使って演奏した、イタリア・ルネサンス時代のストリート・ソングの即興曲も入っている。どの曲にもソリストとして、あるいはアンサンブルの一員として参加したマは、チェロとモンゴルの馬頭琴を演奏する。モンゴルのソプラノ歌手もいて、彼女の出身地の伝統的な歌をうたう。十分な知識のない西洋人の聴き手にとって、東洋の音楽はある程度慣れることが必要だ。音楽の多くは律動的なオスティナートにもとづいている。メロディは東洋の音階を使い、イントネーションは節度がない。音楽は色彩、テクスチャー、雰囲気がすべてのようで、テーマと呼べるようなものはなく、反復が展開の代わりをする。コントラストは楽器が加わるなど急激な変化を通して実現される。とはいえ、楽曲はしばしば美しく、デリケートで、夢見心地にさせるところがあり、あるいは安らかである。聴く人はきっと彼あるいは彼女なりに気に入りの曲を見つけるだろう。演奏はすばらしく、とくに創意に富む即興演奏は見事。マの音色と個性が際立つのは仕方ないが、彼は実際にも、あるいは精神的にもけっして支配していない。添えられた小冊子にはマとこのプロジェクトの音楽学者シオドア・レヴィンのエッセイ、演奏家たちの写真、東洋の楽器の絵が載っている。（Edith Eisler, Amazon.com）