確かにシェリル・クロウは、何度もグラミー賞を受賞したことで、安易な称賛を浴びてきた感がある。しかし、10年間のソロ・キャリアのうち後半にやや問題がある(「C'mon C'mon」や「Soak Up the Sun」のバラ色の楽観主義など、いかにも無理をしているように見える)ことに目をつぶれば、デビュー10周年を記念する本作は、彼女の語り口のうまさを再認識するきっかけとなるはずだ。「Everyday Is a Winding Road」ではつらい長時間労働にひそむ落とし穴が、「My Favourite Mistake」では困った恋人のことが、MTV受けしそうなポップな枠組みの中で要領よく語られている。
ところがどうしたわけか、007映画の主題歌となった「Tomorrow Never Dies」や、アメリカの中絶問題を取り上げた「Hard to Make a Stand」といった佳曲がオミットされている。この2曲はイギリスでもかなりのヒットを記録したのだが。その代わりに3つの新曲が収められており、そのうちの2曲、つまり聖書の教えを思い起こさせる「Light in Your Eyes」と9月11日以降の世界に触れた「Let's Get Free」には、ジョージ・ハリスンとビートルズからの影響が見てとれる。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)