父親の影響でジャズに浸かって育った森山良子だが、これまでジャズ・アルバムは1枚も作っておらず、これは初のジャズ作品。ピアノの島健を中心とするオーケストラ(一部ストリングス参加)をバックにジャズ・スタンダードを伸び伸びと歌っていて、まさにジャズ歌手宣言ともいうべき作品だ。ふだんよりキーを下げて歌ったというだけあって、どっしり重心の低い歌声が印象的。アップ・テンポの「スワンダフル」では達者なスキャットも披露する。2曲にマイケル・ブレッカーが参加しているのも話題。父親の歌声が冒頭に流れる趣向も洒落ている。(市川正二)