2003年6月、アトランタ州ジョージアのフィリップス・アリーナで収録された、マッチボックス・トゥエンティーの『Show』。ここで描き出されるのは、ひたむきなロック・バンドが絶頂を迎え、存分に持ち味を発揮する姿だ。世界が認める実力者ぶり、一糸乱れぬ演奏など、マッチボックス・トゥエンティーの「More Than You Think You Are」ツアーの壮観さを余すところなく伝えるために、5.1chサラウンドに対応したレコーディングおよびミキシングがなされている。撮影はハミッシュ・ハミルトン監督（マドンナ、U2、ジェニファー・ロペスの映像作品で有名）の指揮の下、フィルムに近い美しさを得られる高解像度ビデオを使用して行われた。
   本作で確認できるとおり、マッチボックス・トゥエンティーがポップな楽曲に対して見せる鋭いセンスは圧倒的だ。ドラマーのポール・ドーセットによる推進力に満ちたアタック、リード・ギタリストのカイル・クックが披露するボーカルとフレットワーク、リード・シンガー・ソングライターのロブ・トーマスが示すソウルフルな力強さなど、見どころは満載。（時々出てくるトーマスのピアノ演奏を無視すれば、その分さらに印象がアップする。）コンサート本編には、インタビュー映像などの余計なカットが一切挿入されていない。ディスク2に収められている45分間のドキュメンタリーは、作為を排した分かりやすい作りで、アリーナ・ツアーの運営にどれほどの労力が必要とされるかを明らかにしていく。
   このコンサートを耳で楽しむなら、やむを得ずステレオで再生する場合でも、ドルビー・デジタル5.1chが最適だ。ドルビー2.0chのトラックも用意されているが、マトリクス系のSRSサークル・サラウンド5.1chにエンコードされるために効果が損なわれる。ドルビー専用の高性能サウンド・システムの登場や、ドルビーを標準とした一般家庭用AV機器の高い普及率を考えると、SRSを入れた点には疑問が残る。残念ながら、DTSサウンド・ミックス（広告に明記されていた）やCDと同クオリティーのPCMステレオ・ミックスはなしだ。（Michael Mikesell, Amazon.com）