「過去」からの遺産をどうやって「未来」へ引き継ぐのか
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コナンドイルの「失われた世界(the lost world)」という本がある。隔絶された場所で恐竜が生きていたというSFだ。この手の話は たとえば「キングコング」であるとか 「ジュラシックパーク」という路線を生み出した。日本の「モスラ」もドイルの延長上にあると言ってよい。
そんなSFを踏まえて 現実に存在する「失われた世界」を考えてみると マダガスカルが筆頭に来るのではないかと本書を読んで強く思った。
編者の山岸が冒頭で述べているように マダガスカルには固有種が実に多い。マダガスカルにしかいない種が多いという事実は とりもなおさず マダガスカルが「隔絶された場所」であることを意味する。
そんな「「ロストワールド」であるからこそ 多くの生物学者を惹きつけてやまないのが この島ということなのだと思う。
ロストワールド系統の話は キングコングを除くと 比較的ハッピーエンドではないかと思う。この場合のハッピーエンドとは その「失われた世界」は そのまま維持されるということを意味している。書いている作者たちが 「失われた世界」を敵視せず 保存すべき大事な場所であると考えてきた証左であろう。
現実のマダガスカルも同様に保持されることを強く希望する。
勿論 グローバリゼーションが進む世界の中で そういう「保持」が関係者各位にとって どのような意味になるのかという難しい問題は常にあると思う。
住民や国の経済がどうなのか。2005年段階の国民一人当たりのGDPが$250程度というのは いかにも厳しい同国の状況を語っている。そんな状況を踏まえた上で 「過去」が大事に維持してきた同国の自然を どうやって「未来」へ そのまま渡せるのか。それが現在に生きる僕らの課題なのだろう。