第一次世界大戦の戦場で記憶を失ったスミシィは、精神科病棟から脱走。ショーガールのポーラと出会い、結ばれる。作家の仕事を得たスミシィは、出張先の交通事故によって、戦争前の記憶を取り戻すが、今度はポーラとの思い出を忘れてしまう。『哀愁』などでメロドラマの名匠として知られるマービン・ルロイ監督が、運命に翻弄される男と女の愛をじっくりと描いた珠玉のクラシック。
   前半は、ややゆったりとした展開だが、中盤、スミシィの記憶が戻るあたりから、ストーリー上で重要な部分をあえて描かないなど、観る者のイマジネーションを刺激し、目が離せなくなる。一見、物語の軸はスミシィの側にあるようだが、じつはヒロイン、ポーラの「心の旅路」として観ると、切なさや悲しさが倍増。愛する人に対しての、つつましやかな想いと執念の両方を持ったヒロイン像は、いま観ても十分に興味深い。グリア・ガースンの凛とした美しさは、時代を超えて永遠の輝きを放つ。（斉藤博昭）