『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』でも有名なように、ドイツの手工業では職人の遍歴が制度化されていた。私もこの点に興味を覚え、本書を購入したのだが、著者の関心はむしろ職人組合に置かれている。職人組合とツンフト、アムトの関係、職人組合への加入儀礼、職人蜂起の原因と影響などが詳細に検討される。どうやら著者は19世紀以降の労働組合との比較が念頭にあるようで、職人組合の特異性、機能性が問題とされる。その点では資料の点検、諸学説の批評、数値的実証性と文句の付けようがない。
しかし、より興味深いのは、職人組合という閉鎖的機構が近代まで絶大な力を保ったことや遍歴の強制ではないだろうか。それともその部分は既に研究され尽くしているのだろうか。