思春期から引きずる心の空洞を埋める話が、世界の終末から創造神話にまで膨れ上がるのは大げさかというとそれも違うだろう。結局世界の創造神話のほとんどは、一対の男女によるエロスの物語以外のなにものでもないからだ。ただ気になるのは、黒幕とも言えるバーべム財団の首領が何やら悪魔的存在で白人というところだ。エヴァにもゼーレという白人の集団による黒幕的存在があった。これがクロスカルチャーな視点から何を意味をしているのかはもう少し考えてみる必要がある。
確かに、基本的な設定部分に『エヴァンゲリオン』を彷彿とさせるところを感じますが、エヴァが物語の設定に『宗教神話的象徴・思想』を十分に咀嚼しないまま持ち込んでストーリーを破綻させたのに比較すると、魅力的な神話的叙事詩・物語(サーガ)を紡ぎだしていると思います。
特に、この作品で使われている音楽は魅力的で、映像の美しさと相まって、観るものに作品の印象を深く刻み付けていきます。
また、メインキャラの綾人と遥の『時間のずれ』は、そのまま東京ジュピターと地球との『ずれ』ともリンクし、失ってしまった時間や感情を取り戻そうとする主人公達の性格に深い陰影を与え魅力的な人間ドラマを形作っています。
ただ残念なのは、急に結論を急いだような『人類補完計画』的なラストで、せっかくの人間ドラマが…。何とかならなかったんでしょうか…。
人類が次の階梯へ、新たな段階へ、という曲解したグノーシスもどきの『発展段階史観』になっちゃうと、せっかく紡いできた『人間ドラマ』が無化されてしまうのではないのでしょうか…。
もう少し、この魅力的なキャラクター達のドラマを見たい気がします。
とは言え、全体を通して広がりの在る背景や伏線は惹きつけられました。