Robert Frank: The Americans
価格: ¥23,699
写真家のロバート・フランクは、カメラ機材と真新しいフィルムを携え、グッゲンハイム財団の奨学金を受けて1955年から56年にかけてアメリカ中を駆け巡った。この撮影紀行から持ち帰った写真の数々は、当時のアメリカを忠実に描写し、その後辿ることになる道を暗示している。ネバダ州リーノでは、市庁舎でカップルに出会って将来に希望を抱き、薄汚れた屋根を見下ろして現在に失望する。混沌とした人種間の緊張状態の中にも魅惑的な美しさを見出し、そして恐らく旅路にあったことが理由であろう、アメリカ人の車への愛着には特に共感を示している。そのことは、葬式に参列する人たちが光り輝くセダンにもたれかかっている写真、停めた車の前に敷いたビーチブランケットの上で恋人たちがキスを交わしている写真、あるいはドライブインシアターで少年たちが後部座席に腰掛けている写真などに現れている。また、シートを掛けられたスポーツカーが、カリフォルニアの2本のパームツリーに囲まれている写真や、アリゾナで起こった交通事故で、犠牲者に毛布が掛けられている写真にも見て取れる。
ロバート・フランクの『The Americans』は、Scalo社による美しい初版が出版されてから40年の歳月を経て再出版された。80枚以上の写真は1ページに1枚ずつ配され、キャプションに関する情報は巻末に記載されており、写真集を見る人がイメージを自由に膨らませることができるようになっている。作家のジャック・ケルアックが書き下ろした序文は、ある夜に行われたパーティ会場の外の歩道で、そこに腰を下ろしてフランクが自分の作品を見せながら本人に依頼したもの。ケルアックの言葉はフランクのイメージに広がりを与え、反対にフランクの写真そのものがこの作家の言葉に見事にイメージを与えている。