本作には優しいラブ・ソング、アコースティックな楽器編成、土着的なダンス・リズム、サルサ、スカ風味のロック、さらには若干ながらブルージーな感覚までもが盛り込まれ、驚くほど魅力的なかたちにまとめられている。本作のそこかしこからうかがえるように、チャヤンは型にはまったバラードやありふれたダンス・トラックから解放され、新たなエネルギーを得た。その歌声には、スペイン人歌手アレハンドロ・サンスを思わせる厳しい感傷がある。
「Sentada Aqui en Mi Alma」と「Un Siglo Sin Ti」は盛り上げ方が絶妙。「Caprichosa」と「Santa Sofia」は粋なミュージカル風の伴奏と力強いコーラスが効果的だ。長年にわたって商業的な成功を収めてきたシンガーとしては意外な展開だが、『Sincero』はチャヤンの美青年然としたルックスの裏に隠れていた能力をついに解き放ってくれたのである。(Joey Guerra, Amazon.com)