著者は冒頭で、“十年以上前に、私は『ダンマパダの教え――初期仏教の「反社会」主義』という書を出しましたが、その中で『法句経』の反社会性を強調して次のように述べました。・・・（中略）・・・このように述べて、私はその書を通じて、初期仏教では一般の社会人は救われないと一貫して主張したのです。ところが、それから十年の歳月が流れ、『法句経』について私の見方が変わりました。・・・（中略）・・・次第に、仏教を信じれば、すべての生きる悩みから救われると確信するようになりました。”と述べる。

私が前書を読んだ時、著者は釈尊の仏教を理解していないと気づいた。しかし、前書の過激な主張を「赴機問』と考えれば、釈尊の教法の理解度を確かめる問題集として役立つと考えた。残念ながら、本書で著者は自らの「赴機問」に答えてはいない。著者が傾倒する『バガヴァッド・ギーター』の神の概念が釈尊の「諸法無我」と矛盾することに気づかない限り、答えることは出来ないだろうし、見方は変わらないはずである。