黒の世界の美
★★★★★
ルドンは好きな画家で、1989年に東京国立近代美術館で展覧会を見て、その木炭画の美しさに驚いた.岐阜県立美術館が所蔵で何点か作品を持っているので、来館した時見たが、鮮やかな色彩を用いた作品よりも、黒の作品のインパクトは強烈だった.
このDVDは、そんなルドンの「黒」の魅力を余すところなく紹介している.先に書かれていた方のレビューを読んで買ったのだが、内容はとてもよい.気球が昇っていき、巨大な目玉が燃えて落下しながら怪物の頭部に収まる画像は鮮烈で、複数の作品を映像としてうまくつなげてあるのには感心した.怖いという印象を持つ人も多いルドンの「黒の時代」の作品だが、人が誰しも持っている心の闇や夢の中の世界を表現していて、このDVDはそれを映像としてよく表現していると思った.ジャケットの絵にもある蜘蛛がオープニングに出てきて歩き回る様子がとてもユーモラス.タイトルの書体や音楽もよく吟味されていて、短いがよい作品だと思った.