過去の戦争(ガンダムヒストリー)を黒歴史と地中深くに封印し、断絶した世界に立ち上がる新たな物語。月からやってきた人々は、その過去を引きずり、戦争をしかけてきた。過去を失った人々は封印された過去を紐解き、月との戦いをはじめる――。かつてのガンダムを20年後にどのように解釈するか、といった挑戦がじつに意欲的だ。その意思は、ガンダムそのもののデザインにも現れている。ヒゲのようなものが顔につけられたガンダム。これは発表当初から大きな議論のもととなった。しかし、蓋をあけてみれば、その牧歌的な物語こそが大きな話題に。戦争を忘れた世界が戦わなければいけない理由とは? 姫を取り替えるという寓話的なモチーフと、戦いよりも人々の心理に力点を置く物語が「ガンダム」という固定概念にとらわれず斬新敵だった。これも「ガンダム」シリーズのあるべき素顔だ。(志田英邦)
必ず再評価される作品
★★★★★
「食わず嫌い」と申しましょうか、いままで観たこと無かったのですが、最近DVD1巻を観てしまい見事にハマり一気に全巻観てしまいました。
しばしばガンダム論は「戦争論がニュータイプ論にスリ替えられた」と批判されますが、ターンエーは見事に戦争論を描き切りましたね。(もちろん現実の戦争はこんなもんじゃ済まないと思うけど、お茶の間で鑑賞用のアニメなんだしね…)
とくに前半30話くらいまでの人間描写や世界観はデキが良かった。後半はモビルスーツ戦が中心で、前半の緻密さが損なわれたのが残念。(でも月で衝撃の過去が明らかに…は圧巻)
これは若者向けのアニメじゃないですね。人生を折り返した中高年向けですね。だからアニメファンがもう少し年を経てから再評価されるでしょう。
滅亡と再生を繰り返す人類史に問う、戦争と平和、そして、愛と忠義の物語
★★★★★
一度滅亡し勃興してきた地球人と月で静かに1万年の時を暮し続けた高度な文明を残すMoon Race(月人)の物語。
これまでのガンダムの世界観とは大きく異なり、絶対的存在である月の女王ディアナに忠義・忠愛を捧げる主人公のロランと親衛隊隊長のハリー大尉を軸に、武力・権力を持つ者から身分が低い月の運河人達まで自分の料簡で自分の信じる道にピュアに生きる人々の生き方が鮮やかにやさしく強く描かれています。
ノアの箱舟、アトランティス大陸、ナウシカ等の物語のように人類は恐らく滅亡の歴史を繰り返し、ファーストガンダムやエヴァがテーマとした人類の進化=アセンションが注目される昨今、戦争と平和とは何か、人はどう生きるべきか、人類の進化とは何かを考えるきっかけにも成り得るTVアニメの枠を超え富野氏が到達できた一つの優れた芸術作品です。
個人的にはガンダムで2番目
★★★★★
台詞回しのおもしろさはVガンダムほどではないですが、富野節は健在です。
ストーリーも面白いしグイグイ引きこまれる良作です。
2000年代の新しいガンダムは古典回帰といった感じでいわゆるスーパーロボットモノみたいなテイストがありますね
ガンダムの最終章そして最高峰
★★★★★
自分の中ではVが一番お気に入りでしたが、それと並ぶくらい大好きです。丁寧に作られたストーリー、画質、キャラクター、どれも文句のつけようがありません。 特にラストは…、涙なしでは見れません。ロランがソシエとキスをして、ハイム家を離れて行くシーンは、胸が熱くなりました。ハッピーエンドが好きなので、ロランとソシエには、Gのドモンとレインや、Xのガロードとティファのように幸せになってほしかったです。
穏やかで優しいガンダム、一度見てはいかがでしょうか?
大切なことは
★★★★★
最近になって『∀ガンダム』を見終わりました。
ビジュアルやMSの格好よさや派手な戦闘シーン、美少年・美少女の活躍などの要素は薄いですが、話の深さ、重さに打ちのめされました。 当初の∀は機能を引き出せず動きも鈍く、正直格好悪いです。パイロットの主人公・ロランはどんな時も相手を殺してしまうことを躊躇います。罪を背負いたくないからではなく、本当に相手を思うからです。 月と地球、双方の間に立つ彼ならではですが、スタイリッシュなガンダムに乗った美少年が華麗に敵を撃墜…とは無縁だからこそ、格好悪い∀も含め人間くささが漂い、もどかしくも同調できるのではないでしょうか。 物語の柱になる女性たちは己の信念と相反する事情を知り、成長していきます。キエルはディアナの苦悩を、ディアナは地球側の敵意と身内の造反を。ソシエはギャバンの死や姉とディアナの事情を知って大人になっていきます。リリは当初は生意気な令嬢でしたが、グエンが去って急に貫禄を発揮し始めます。 自分の知らないところで起こる、でも自分に関係があり避けては通れぬ事態を通して人々が成長していく物語。精一杯生きる姿勢に地球の人もムーンレイスも変わりはなく、守りたいことや人の為に身体を張る。 MSはあくまでその添え物であり、話のメインが等身大の人間であることが∀の魅力なのだと思います。 だからこそ、MSや武力にこだわったギンガナムやグエンはあのような結末を迎えた、そういうことではないでしょうか。 最終回でディアナとキエルが選んだ道もまた人間くさく、多くの人が応援したくなるでしょう。 大切なのは人の繋がり、誰かを思う気持ちだと感じさせてくれます。殆どのカップルが地球と月の組み合わせなのも注目です。流れる『月の繭』が、これからの彼女たちやそれぞれの道を選んだ人々が立ち向かう苦労とその先の幸せを護っているようでした。