メディアに操作されないためにも
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たくさんの資料を丹念に調べて、アメリカの映画史の中の日本人像を研究した労作です。著者のすばらしい仕事に心から拍手を贈りたいと思います。
個人的に一番印象に残っているのが、戦争遂行のために宣伝媒体として、当時最大の影響力を誇っていた映画を使ったという点です。ニュース映画が映し出すのは、出征兵士を送るため皆が一様に万歳の動作を繰り返す姿や、宮城の前の広場で一斉に礼拝する人々です。
自分たちとは絶対に理解し合えない異質の文化を持った民族という日本人像を作り上げています。このような映像による印象操作が今日も特定の民族や特定の宗教に対して行なわれていないとは言えません。日本人の中にもムスリムに対してそういう印象を持っている人は少なくありません。
この本は私たちの目から偏見の鱗を一枚ずつ取り払ってくれます。映画ファンだけでなく、様々な民族問題や社会問題に関心のある方々にもお勧めしたいと思います。
プロパガンダとしての映画--民主主義国家における戦時宣伝の一例
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非常に興味深い本である。この本は、第二次世界大戦中のアメリカ映画が、日本人をどう描いたかを検証し、その背景とアメリカ人の日本人観への影響を考察した本である。この本を読むと、「民主主義国家」であるアメリカにおいて、アメリカ人の敵国日本への憎悪がどの様に形成されて行ったかが、非常に良く理解出来る。第二次大戦中のアメリカで、日本への敵意を煽る為に、どの様なプロパガンダが行なはれたかを知る為に、本書を推薦する。--ただし、アメリカ人の人種偏見などは、はっきり言って、もうどうでも良い、と言ふのが、私の気持ちである。そんな事よりも、「民主主義国家」が戦争をする時、敵国への憎悪が、どの様に形成されるかを知る為のケース・スタディーとして、この本が読まれる事を希望する。--又、アメリカにおける対日プロパガンダにおいて、中国系アメリカ人が果たした役割について知っておく事も、私達日本人にとっては、一つの大きな教訓と成る筈である。(西岡昌紀・内科医/ヨーロッパで第二次世界大戦が終結した日(=ヨーロッパの東半分がソ連の支配下に陥った日)に)
ハリウッド映画に取り込まれずに主体的に見るために必要な一冊
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この本を読むと、今も昔も日系・日本人俳優にハリウッドでの活躍の場は狭いようだ。ハリウッドというのが様々なメッセージを発信している記号集団だということは言われて久しいが、それを日本人・日系人にこだわって論考した労作といえる。アメリカ近現代史をひもとく一冊としても楽しめる。