トランスフュージョン
価格: ¥2,100
日野晧正はフュージョンもフリーも演奏する間口の広さが特徴だが、本作はこれ以上はないというオーソドックスなジャズ作品。ファッツ・ナヴァロの<1>、ブッカー・リトルの<2>、フレディ・ハバードの<9>などトランペッターが作曲した人気曲、あるいはケニー・ドーハムの録音を思い出す<5>、リー・モーガンの演奏でおなじみの<3><10>といった、トランペッター絡みの曲を集中的に取り上げている。このなるほどといえる選曲、そしてそれらをワン・ホーン編成でじっくりとプレイしている点が最大のポイントといっていい。
こうした選曲・編成はトランペッターとしての技量、ジャズマンとしての才量がすぐわかるだけに、それなりの覚悟がないと踏み切れないものだが、還暦まであと数年の日野晧正なら怖いものはない。思うがままに吹けば道は開ける、まさにそういった演奏だ。誰のものでもない、キャリアに裏付けられた日野晧正のジャズがここにある。ローランド・ハナ、ロン・カーター、ジャック・デジョネットという共演者の顔ぶれもすごい。(市川正二)