すでに30枚のアルバムをリリースしており、どんなジャンルにでも進出する意欲のある――ただし常に成功するとは限らないが――リンダ・ロンシュタットにとって、未知の分野はあまり残っていない。『We Ran』はみずみずしいが、ブルース・スプリングスティーン、ジョン・ハイアット、ドク・ポムスらによる素材の俗っぽい見直しに過ぎない。リンダをディランのTom Thumb's Bluesに対抗させることは無駄な努力のように思えるかもしれないが、ワディ・ワクテルのトレモロ・ギター、このバンドのブッカーTのような魂の込め方、それにリンダの甘くけだるいような声は、そうではないことを暗示している。ジョージ・マッセンバーグやワクテルがI Go to Piecesを息の祭典にしているものの、(ローリング・ストーンズ、ザ・フーを手がけた)主任プロデューサーのグリン・ジョンズは賢明な選択をしている。そしてバーニー・リードンとハートブレイカーの楽才はリンダの静謐な声に後れを取っていない。 --Roy Kasten