肉体的にはともかく、サウンド的にはその名のとおりの若さを保ち続けているソニック・ユース。すでに23年のキャリアを持つ彼らだが、本作『Sonic Nurse』は最高傑作のひとつと言えそうな仕上がりとなった。前作『Murray Street』より3トラック増え、15分間長くなったが、メロディー重視であることには変わりがない。内容は前作を踏襲したアルバムと言えるだろう。『Washing Machine』以降の作品で強力なスパイスとなっていた奔放な実験精神は今回も抑えめで、隙間なく展開するフィードバックは、スムーズなベースラインやギター・フックと混じり合っている。ある時は鮮烈に、ある時はニヤリとさせるほど巧妙に、耳当たりのよい要素が織り込んであるのだ。
発想力豊かな4人組の17作目となる本作で、バンドはお得意の3人がかりでのギター攻撃を洗練させ、デリカシーに富んだ表現へと向かう。アップビートなリズムに重なるギター・ラインは、フレット・ボードから殴り込んでくる前に、聴く者を誘惑する。この魅力的かつ脅迫的な調べに、キツいほめ殺しの言葉が乗せられる。とりわけ、ブッシュ叩きソングの「Peace Attack」は辛らつ。大胆なリフレインと息をもつかせぬ演奏が繰り広げられる『Sonic Nurse』は、洗練されたガレージ・ロックを考える上で見逃せない1枚であり、おいしいスリルを約束してくれる。(Christopher Barrett, Amazon.co.uk)