チチェスター出身のホープ・オブ・ザ・ステイツは、デビュー当初「新たなレディオヘッド」といううたい文句で評された。だが本作は事実上、ステイツをかなり様式的なロックバンドとして位置づけている――同系統のギター・バンドの多くよりもはるかに野心的なアルバムだとするならだが。壮大なオープニング曲「The Black Amnesias」にちょっと耳を傾ければ、ステイツがその広大な守備範囲を、モントリオール出身の無政府主義者のオーケストラ、ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラーや、スコットランド出身のインストゥルメンタル・ロックバンド、モグワイといったバンドから継承していることはあきらかだ。けれどもステイツは、純然たるポップソングに前衛的な終末思想をねじ込むという賞賛に値する離れ業も成しとげている。なかでも「Enemies／Friends」と「The Red, the White, the Black, the Blue」は、UKチャートの歴代トップ20のなかでも指折りの奇妙な曲だ――うねるギターと勇ましいドラムできらびやかに飾り立て、ヴァイオリンで盛り立てるポストロック・トラックであり、揺るぎない若く気高い情熱に後押しされている。

   サウンドの盛り上がりぶりは、フロントマンのサム・ハイリヒイにとってやや度が過ぎているとみえ、本作のうち2曲では、その声を痛ましいほどに限界まで延ばしている。だが幸いなことに「Black Dollar Bills」のような堂々たるアレンジをみせる曲のおかげで、このすてきなデビュー作はうまく軌道に乗っている。（Louis Pattison, Amazon.co.uk）